言葉の問題

作品を発信するブログ。

楽しんでますか?

ショートショート「本当の会社ごっこ」

f:id:tanisuke1234:20180104085026p:plain

竹田は顧客に提案するパワーポイントのファイルを操った。

 

「竹田。ちょっと頼みがある。」

 

伊葉部長が竹田を呼ぶ。

 

竹田はパワーポイントのファイルを閉じて席を立った。

 

「はい。伊葉部長。」

 

竹田は伊葉部長の席に寄る。

 

伊葉部長は渋い顔をする。

 

「客がシステムにトラブルが起きたと文句を言っているんだ。」

 

「はあ。」

 

「ごっこでいいから、謝ってきてくれ。」

 

「ごっこですか。」

 

「フリだ。伝わればいいんだよ。」

 

「分かりました。謝罪ごっこですね。」

 

竹田は笑った。

 

竹田はカバンを持ち会社を出た。

 

竹田は電車内で思った。

 

小さい頃に鬼ごっこをした。

 

あれは鬼のフリをする遊びだ。

 

今は謝るフリをしに行く。

 

いくつになってもごっこ遊びをしている。

 

竹田は客先に着いた。

 

担当者の席に向かう。

 

竹田は神妙な面持ちをする。

 

「この度はシステムにトラブルがあり、誠に申し訳ございません。」

 

竹田は頭を下げる。

 

「まあいいよ。」

 

担当者は思ったより明るかった。

 

竹田は妙な感じがした。

 

トラブルを解決すると担当者は帰してくれた。

 

竹田は会社に戻った。

 

「ご苦労さん。」

 

伊葉部長は竹田を見た。

 

「ところで。」

 

「今期の売り上げにもっと数字が必要なんだ。」

 

「ごっこでいいから、契約書を作ってくれ。」

 

「ごっこですか。」

 

「フリだ。後で直すからいいんだよ。」

 

「分かりました。契約書ごっこですね。」

 

伊葉部長は笑った。

 

竹田は残業して契約書を作り上げる。

 

伊葉部長は先に帰った。

 

竹田は会社に泊まる。

 

竹田は疲れた。

 

孤独だと思った。

 

でもごっこだからいいかと思った。

 

いつの間にか眠る。

 

朝になり人の声がした。

 

竹田は並べた椅子から起き上がる。

 

他の社員がちらほらと来ている。

 

伊葉部長が出社した。

 

「伊葉部長おはようございます。契約書はできています。」

 

「ご苦労さん。」

 

「ところで。」

 

「うちの部から早期退職者を一人出すことが決まった。」

 

「ごっこでいいから。退職してくれ。」

 

「ごっこですか。」

 

「フリだ。また採用するからいいんだよ。」

 

「分かりました。退職ごっこですね。」

 

竹田は伊葉部長に退職願いを出した。

 

次の日になり中途入社の大嶋が伊葉部長に尋ねた

 

「竹田さんはまた採用されるんですか?」

 

「馬鹿を言え。竹田は本当の退職ごっこだぞ。」

 

大嶋は笑った。

 

 

いつもお読みくださりありがとうございます。

感謝しています。

 

明読斎 

○●○●○●○●○●○●○●○●○●○●○●○●○●○●○●○●○●○●○●○●○●○●

いつも読んでくださりありがとうございます。

感謝しています。

作品の感想やアドバイス

雑談、疑問、質問は下の「コメントを書く」ボタンから

書くことができます。

○●○●○●○●○●○●○●○●○●○●○●○●○●○●○●○●○●○●○●○●

プライバシーポリシー お問い合わせ