言葉のこと

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小説「統合失調症発症物語 」   第二話「順哉と僕」

 翌日の朝になった。

僕は朝食を食べに食堂に向かった。

閉鎖病棟の中は廊下が十字に延びている。

食堂は十字の中央にある。

朝食はワゴンで運ばれる。

看護師に名前を呼ばれ、朝食を受けとる。

おかずは焼き鮭と目玉焼きと味噌汁だ。

僕はトレーを持ち、ピンクのパイプ椅子に座る。

「おはようございます。アイムチャンピオーン。」

隣の席の男性が僕に言った。

小柄な人だ。

「アーユーアチャンピオンですか?」

僕は彼に聞いた。

「イエス。アイムチャンピオーン。」

「その子は順哉くんよ。向かいの席に座ってもいいかしら?」

「どうぞ。」

向かいの席に清美さんが座る。

「食べながらでいいから、昨日の続きを話してくれる?」

僕は焼き鮭を箸でつついた。

焼けた香りが漂った。

「分かりました。」

僕は記憶を辿った。

僕は異動した部署でも更に馴染まなかった。

異動した部署でも他人を見下した。

他人を見下すことでかろうじて心を保つことができた。

「宮腰が悪いんだよ。」

心の中の尖った包丁は僕の心にちくちくと刺さった。

「あなたは大きな嘘をついたのね。」

清美さんは同情の顔を見せる。

「ありがとうございます。」

「ユーアーチャンピオン。」

順哉がとびきりの笑顔を見せた。

「順哉、ありがとう。」

僕は他人の頭を踏みつけて他人の上に上がろうとした。

「お前はもう仕事をしなくていい。」

先輩が言った。

僕の心の真ん中に包丁が刺さった。

目の前が暗くなった。

翌朝会社を休むか出社するか悩んだ。

会社に行く気力がなくなったので僕は実家に帰った。

実家から会社に休みの連絡を入れた。

「あなた大変ね。」

清美さんが手を合わせた。

「はい。」

順哉が看護師にトレーを返して隣の席に戻った。

「彼は小説を書こうとしているの。」

清美さんが順哉に僕のことを説明した。

「小説ができたら僕は読みますよ。」

順哉が励ましてくれた。

「順哉ありがとう。」

「どういたしまして。僕は事故に会ってハーピーちゃんや湯佐エ門さんが見えるようになったんです。変なことを言ったらアイムソーリー、ヒゲソーリーです。」

順哉は事故に会ったわりに性格が明るい。

笑顔で接してくれる順哉は優しかった。

僕と清美さんは食事を終え、トレーを看護師に返した。

僕は昨夜書いたレポート用紙をテーブルの上に広げた。

「会社に連絡をした後に起こったことです。」

清美さんは僕の隣の椅子に静かに座った。

僕は一つ目の出来事を読んだ。

順哉はレポート用紙を食い入るように見た。

『母に、「お前は心の病気だ、入院しろ。」と言った。』

僕の話しが甲羅に覆われた。

僕の心の内側を虫が食った。

 

第二話「順哉と僕」おわり 第三話に続く。