言葉のこと

言葉を教えたり小説を載せたり。

小説「統合失調症発症物語 」  第五話「樹さんと僕」

「他の宗教ですが。」

星田さんが目を開いた。

バベルの塔に似ています。」

バベルの塔?」

僕は星田さんに聞いた。

「昔、神に近づこうとした人々が塔を作りました。しかし、神によって人々は言葉を乱されました。結果、塔は崩れ、人々はまた地面で生活するようになったという話です。」

「あなたの病気は話す言葉が支離滅裂になることがあるのよね?」

「その通りです。」

「星田さんの話の通りね。」

僕は秋乃さんの隣にいる男性に声をかけた。

「わりーわりー。興味深い話しだったから参加してたよ。」

「俺は樹。いっさんと呼んでよ。」

「いっさん。よろしくお願いします。」

「いっさんは薬物依存症だよ。」

秋乃さんがいっさんの説明をした。

「俺は依存症だよ。」

いっさんは変顔をして白目を向いた。

「続きを聞かせてくれる?」

いっさんが右手を出して続きを促した。

僕はレポート用紙を読んだ

『両親が倉庫に迎えに来た。』

僕は倉庫をよじ登って外に出た。

外に出ると両親の乗った車が見えた。

僕は車の後部座席に座った。

両親の車は僕の自宅に向かった。

「虫はどうなったの?」

清美さんが僕に尋ねた。

「父か母のどちらかが虫でどちらかが人間だと思いました。」

「大変だね。」

いっさんが眼鏡を直した。

僕は頷いてレポート用紙を読んだ。

『自宅につくと、両親をソファに座らせた。』

父か母のどちらかが虫でどちらかが人間だ。

僕は虫を破壊する必要があると思った。

父親と母親のどちらが虫なのか?

心の内側につきつけた包丁を取り出す。

台所の下の流しの扉を開ける。

僕は包丁を握った。

僕は虫に突進した。

「ぐぅあぁー。」

母親がソファから立ち上がった。

僕の右手に体当たりする。

包丁は床に落ちた。

カラン。

母親は包丁を拾い、玄関から外へ出る。

「警察に通報して。」

父親が母親に向かって叫んだ。

僕は父親の顔を覗いた。

父親の顔だ。

「本当ですか?」

順哉が驚いた。

「アイムソーリーです。」

僕はレポート用紙を読んだ

『僕は暗い足取りで外へ出た。』

パトカーのサイレンが遠くから聞こえた。

道の真ん中から玄関を振り返った。

父親が玄関から外に出て来た。

「こっちへ来なさい。」

父親は人間だ。

虫は世界中にいた。

 

第五話「樹さんと僕」おわり 第六話につづく。