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ショートショート「きびだんご」

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昔々、あるところにおじいさんとおばあさんがいました。

 

ある日、おじいさんは山に芝刈りに、おばあさんは川に洗濯に行きました。

 

おばあさんが川で洗濯をしていると、川上から大きな桃が

 

どんぶらこ、どんぶらこと流れてきました。

 

村に度々来ては悪さをする鬼のせいで、村の人々は

 

気が休まることはありませんでした。

 

その後色々ありまして、桃から生まれた桃太郎は村の平和のために鬼退治をする決意を

しました。

 

鬼退治の道中、腰にぶら下げたきびだんごの匂いにつられて、

 

犬と猿ときじが鬼退治のお供に加わりました。

 

きびだんごはとても美味しかったそうです。

 

桃太郎一行が海を渡ると、鬼ヶ島が見えました。

 

「もう引き返せない。」

 

桃太郎は鬼を退治するまでは村に帰らない覚悟でした。

 

桃太郎が鬼ヶ島に足を一歩踏み入れると、どこからともなく鬼が

 

現れて、桃太郎を囲みました。

 

「うまそうな小僧だ。」

 

鬼はよだれを垂らして桃太郎を見下ろしました。

 

桃太郎は恐怖を感じました。

 

桃太郎は剣に手をかけました。

 

剣を抜きかけたときにふと思いました。

 

このまま剣を抜いていいのだろうか。

 

剣を抜いたら私はこの鬼と同じだ。

 

暴力をはたらくことになる。

 

剣を抜いて村の平和は果たして訪れるのだろうか。

 

村の人々は今度は私を恐れることになるのではないだろうか。

 

つまり、私が鬼になってしまう。

 

桃太郎は剣から手を離しました。

 

ここで剣を抜かなければ私は鬼に食われて死ぬだろう。

 

桃太郎は剣を抜くのをためらいました。

 

「恐怖に打ち克つ強さが欲しい。」

 

その時、お供の犬、猿、きじが声を揃えました。

 

「きびだんごです。桃太郎さん。」

 

桃太郎は剣の代わりにきびだんごを鬼につきつけました。

 

鬼は桃太郎の様子を見ました。

 

鬼は桃太郎からきびだんごを受けとり、

 

ぱくりと食べました。

 

「美味しい!!」

 

きびだんごはとても美味しかったのです。

 

「桃太郎さん。こんなに美味しい団子は初めてです。是非とも仲間になりたいです。」

 

鬼はきびだんごを食べたいがために、村の人々に悪さをするのをやめました。

 

桃太郎のおかげで村に平和が訪れました。

 

桃太郎は村の人々と鬼と共に静かに暮らしたのでした。

 

おしまい。

 

お読みくださりありがとうございました。

明読斎

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