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「新極真会空手と統合失調症」NPO法人新極真会静岡湖西豊田道場  & 明読斎 対談 ・第二章 幼なじみの死②

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②人目が怖くなって

 

本:そんなヤツだったけど、高校卒業後、専門学校へ行ってそこも無事卒業して普通に社会人になった。

 

明:よかったですね。

 

本:僕は彼とはまた別の大学へ行ったんで、再び関係が近くなったのは、彼が就職してからで。

 

久しぶりに会ったら、本人が、「オレは精神病だ。この間も自殺しようとした」って言うんだ。

 

明:なにがあったんですか?

 

本:ここで自己弁護するわけじゃないけど、僕は本読みの映画館に住みたいようなオタク気質なんで、そこらへんは善悪は別として気質的に付き合いきれないんだが、ヤツはそれまで、万引きやキセルくらいの軽犯罪はあれこれやらかしていた。

 

だから歳を取ってそんな自分の行いを恥じているのかな? とも思ったんだが、どうも違う。

 

明:なぜ、自分は精神病だと。

 

本:本人の言葉によると、ある日、突然、電車に乗れなくなったんだそうだ。

 

明:電車ですか?

 

本:同じ車両に乗ったった乗客全員が自分を見ている、と。

 

明:それって、実際は見られてないけれども、みんなに見られている気がするやつですよね。何か統合失調症の症状に似ていますね。

 

やっぱり精神病っぽかったんですか?

 

本:うん。それだったと思う。本人もそう気づいて、自分を精神病だと疑いはじめたんだ。

 

明:良くなったんですか?

 

本:結果としてその時は悪化した。電車だけでなく、街中でも、どこにいても、とにかく自分が注目されているように感じるようになった。

 

明:あーあ。病院は行かなかったんですか?

 

本:病院へ行ったとも言っていたが、処方された薬をあまりまじめに飲んでなかった気がする。

 

もともと薬をまじめに飲むタイプじゃなくて。抗精神剤の効果を信用していなかった。

 

まず、精神科医と信頼関係ができてなかった気がする。 本人的には、なにもかもイヤになってきて、「これはもう死ぬしかないな」とビルの屋上へのぼった。

 

明:そして、飛び降りたんですか?

 

本:降りない。 降りれなかったらしい。

 

屋上のフチでずいぶん長い間立ってて、目を閉じても飛び降りれなくて、自分は死にたくないと気づいたと言ってた。

 

明:これは、大事件を起こす前に入院なりした方がいいケースですよね。

 

本:いま振り返るとそうだね。

 

でも当時は、本人がこのことは本にしか話してないんだ、とか言って周囲に症状を隠して、できるだけ普通に暮らしていた。

 

明:ヤバイ状態ですね。

 

ただ、僕が考えるには、その時点で本当に自殺に踏み切るのは相当な精神力が必要だと思います。

 

本さんから見て一線を超えそうな兆候はあったんですか?

 

あと気になるのは、その人の言葉を聞くと、自分は精神病だ、だから自殺するという因果関係のように聞えるんです。

 

自分が精神病(様々なおかしな症状が現れている状況)だということに、自殺の原因があるということです。

 

一見普通に聞き流してしまいそうですが、僕はそうは思いません。

 

僕たちが普段「〜だ。だから〜。」という言葉を話しているときに、因果関係が実は逆のことがあります。 つまり、僕は精神病が自殺の原因だとは思えないんです。

 

因果関係が実は逆で、自分は自殺をする。 だから、精神病なんだという流れなんじゃないかなと思います。

 

その人は過去に何かがあって段々自殺を考えるようになった。 そして精神病になったという感じです。

 

そうするとその人は、段々自殺を考えるような何かが過去にあったと考えられます。 そして、自殺のことを逐一考えてるもんだから精神病になったという流れです。

 

ここは結構細かく考えたいです。 その2つの違いは、簡単に言えば、その人の過去に「精神病になる何か」があったのではなくて、その人の過去に「自殺を考える何か」があったということです。

 

何かというのは、きっとご病気が関係していると思います。

 

ここからは推測ですが、その人はご病気のことを考えるあまり、自殺を考えるようになった。自分が自殺を考えているなんて周りの人はどう思うのだろうと気になるようになった。

 

何故か、周囲が自分が自殺を考えていることを知っているように思える。 気づけば周りが全員自分を見ているような気がする。

 

自分はきっと精神病だという感じです。

 

だから、その人の言った「オレは精神病だ。この間も自殺しようとした」という言葉は文字通りは受け取れません。

 

受け取るなら「この間も自殺しようとした。オレは精神病だ。」という感じになります。そうするとその人の言葉に「だから誰かオレを助けてくれ」という意思が含まれている気がします。

 

その人の言葉は誰かに助けを求める言葉だったのかなと。

 

本:当時、僕はそこまでは考えなかったな。

 

彼のこととほぼ同時進行で、次の章で語る予定のもう一人の幼ななじみのこともあって、僕自身が極真会館の地方支部内弟子を経験した後だったので、人の役に立つ空手道場を模索していて、この章の彼も少林寺拳法の有段者で全国大会出場の経験もあり、ボクシングの素質もあると関係者に言われていた人で、次の章の人は柔道三段の人だったんで、みんなで空手道場をやってやり直さないか? みたいな方向で話を進めていった。

 

明:それが成功してハッピーエンドなら、本さんはいま僕と話してませんよね。

 

本:まさに。

 

その時設立したのが、新居町体育協会空手部で、後に道場ごとNPO法人新極真会に加盟して現在の新極真会静岡湖西豊田道場になるわけだけど、最初のメンバーの僕以外の二人は、一人は鬼籍に、一人は行方不明になってもう三年経つ。

 

明:精神疾患と闘う道場というのは、こういうことですか。

 

本:この二人だけじゃないけどね。

 

今回の章の彼の場合、まず、僕と再会した時点でかなりダウナーな状態だった。

 

大手の工場にいたんだけど、そこの上司ともソリが合わなくて、結局、退職してしまって。

 

結果、日々、僕のところへくるようになった。

 

二人でアテもなく彼の運転する車で22時頃から夜明けまで、行けるとこまでドライブしたりしていろいろ話を聞いていたのが懐かしいよ。

 

明:その時の話の内容は?

 

本:本当にとりとめもなくいろいろだね。

 

僕としては彼がいきなり死のうとするんじゃないか?っていう疑念もあったんで、それを気にしつつね。

 

明:もし、目の前で彼が自殺しようとしたら、どうするつもりだったんですか?

 

本:それは当然、止めるつもりだったけれども、この時期以前の学生時代の頃から、周囲の想像もつかないこといきなりやりだす人だったからね。

 

あまりに、想定外の事態になったら僕も逃げたかもしれない。

 

明:周囲の想像もつかないことってどんなことをするんですか?

 

本:いまとなっては、本人も両親も亡くなっているんで、回顧する感じで語れるんだが、高校の時にバレーボール部の連中とモメて、相手は体格のいい連中だったんで、彼らが部室にいる時に、鉄パイプを持って一人で乗り込んで大暴れ!! 

 

逃げようとしたやつを手錠でそこにから逃げられないようにして暴行していたら、相手があまりにケタハズレの悲鳴をあげたんで、職員にバレて謹慎だか、停学になった。

 

明:まさか本さんも一緒に…

 

本:まさか、僕はそれを後で知って、なにしてんだ! 殺す気か? と彼とケンカになったよ。

 

そこまで行くと問題児どころか、キ○ガイだろ。 手錠で拘束して鉄パイプはヤバいだろ。 なんなんだ、いったい。

 

明:すごい青春ですね。本気で本の本は、本気と書いてマジと読む本ですか?

 

本:違うよ。ケンカはしたけれども、はじめから殺人をする気はまったくなかった、少なくとも僕は。

 

  当時の危ないヤツは、スクーターを相手にむかって放り投げたり、ガスバーナーで相手の目を焼いてしまったりとか、もう、あきらかに一線を越えてた。

 

僕も彼も自分たちはその線は越えないと意識にいたうえで好きにやってるつもりだったんだ。 でも、時に彼は、僕の想像を超える時があって…

 

明:もう土台となる素行がすごすぎて、ちょっと僕とは違いすぎますね。

 

本:教員が生徒にドラックを密売して逮捕されるような高校だったからね。

 

明:失礼しました。場所が悪かったみたいです。僕、もう、帰ります。

 

本:ちょっ、ちょっ、ごめん、ごめん。はるか昔の話だよ。 都市伝説みたいなもんだと思って。

 

 で、話を本筋に戻すんだけど、明さんの作品で知った知識だと、明さんも教員一家の出身だよね。

 

明:ええ。

 

本:今回の彼の家もそうだし、それに限らず、僕の周囲では精神疾患で悩む人の両親、家族が教育関係者であるケースがわりあい多いんだけど、それってそういう家に育つプレッシャーってあるの?

 

明:本さんは?

 

本:僕は妻が教員免許は持ってるけど、教職はしていない。

 

義理の兄が国立大卒の予備校講師だけど、義兄は大学受験用の数学のプロの講師って感じの人で、人の人生全般にどうこう言うタイプじゃないね。

 

従兄が大学講師だけど、この人は周囲を楽しませようと気を使うタイプで家族や親せきにもいつもそんな感じ。

 

明:家族が教員のプレッシャーですか?

 

本:この章の彼は、学生時代には、金属バットで自宅のちゃぶ台を叩き壊して、自分の部屋に閉じこもって反抗してた時もあったよ。

 

その時は、彼のお母さんから僕に電話があって、「本、あの子がバット持って暴れて部屋に籠ってるの。どういうこと?」って聞かれたよね。

 

だから、家まで行ってドアの前で説得したような気がする。   これはその後の彼の人生の複線なんだろうか?

 

明:家族が教員だとプレシャーがあるのかということですけど、結論から言うと、家族が教員でもまっすぐに育つ人もいるわけで、家族が教員であることにプレッシャーがあるとは思えません。

 

ただ、家族が教員だと、世間のことをあまり知らないで育つ可能性は僕自身を振り返るとあるように思います。それぐらいですかね。

 

③損とか得とか へと続く

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