①精神病といじめと心霊現象 後半
本:ある意味、そうではあるんだけどね。
あのさ、僕や明さんみたいな昭和40年代中後半から、50年代生まれの人って受験戦争まっただなかで、子供の数も多かったし、志望校の高校、大学へ行けなかったって理由で死んでしまう人もいたりしたよね。
明:受験戦争。ありましたね。
本さんはきっと本読んで、映画観て、空手してたんですよね?
本:うん。まさしくそうなんだけどね。
明:あの時代、よく無事に進学できましたね。すごいですね。
受験勉強はどうしたんですか?
本:中学はほとんど行ってなかったんで、高校は県内でも偏差値最下位の公立校で、大学は当時は東京六大学狙うヤツが滑り止めに受けるくらいの歴史のある中部の私立。
だから大学の同級生に明治落ちたとか早稲田落ちたとかそんなやついっぱいいたな。 六大学狙って三浪したあげく仕方なく来たとか。
明:本さんは、その大学に勉強しなくて入れたんですか?
本:それがね、僕の場合、これはあくまで平均的なケースではないと思うけれども、学校は登校してなくても、中学も高校も得意科目だけは全校テスト的なヤツで全国10以内だったの。
明:まさかカンニングじゃないですよね?
本:いや僕が得意なのは現国や古典、小論文だったんだけど、そのあたりは、なぜか、本当に全国10位以内にいたの。
勉強もしないし、学校も行かないでも、一日一冊の読書か一本の映画鑑賞はノルマにして生きてたからね。あと、5キロ以上のランニングやウェイトトレーニングとか。
明:ノルマがすごいですね。
本:だから、僕の経験としては文系なら国(語)か英(語)のどちらか、理系なら数学か理科のどちらかが、全国10以内に入っていれば、なんとかなると思うんだよね。
明:それはかなり特殊な例だと思いますよ。
僕は結局は落ちこぼれましたけど、普通に勉強しました。誉めてくれます?
本:いくらでも誉めるけどさ。大変だったでしょう。
僕は、それってしんどいけど得るものが少ない気がして、とても真似できなかった。
いまも僕の道場の生徒で学校の勉強で苦しんでいる子がいたりするんだけど、そこらへんの先輩戦士として明さんからアドバイスってありますか?
明:なんのアドバイスですか?
本:学校の勉強をどうすれば頑張れるか、みたいな。
明:大丈夫、なんとかなるよ。って感じですね。
本:この章の彼は高校でまず、学力的にちょっと上の学校へ行ったんだよね。
柔道部で大会で頑張ってたからさ、そこらへんのプラスもあって。
明:それって入学後が大変じゃないですか?
本:うん、悩んでた。学校は違うけど家は近所だったから、毎晩、一緒に散歩しながら、彼のグチを聞いたよ。
特に英語がついていけなかったみたいで、苦労してたらしくて。
明:英語で苦労・・・。その人もある意味本さんみたいな割り切りができると苦労しなかったのかもしれませんね。
本:当時高かったデスクトップの国産パソコンが欲しくて、毎朝、新聞配達のバイトを頑張ってたな。
あと体が大きかったんで(身長約190センチ)、それもあってか高校時代にすでにたまに酒をちょびちょびやってた。けど、さすがに自室での家飲みで外では飲んでなかったよ。
明:ここまではまぁ、普通の高校生活ですね。
本:それがね、卒業の段になって、予定が大きく狂うんだ。
彼は周囲からもほぼ合格確実と言われて警察官採用試験を受けたんだけど、不合格になったんだ。
明:それはがっかりしたでしょうね。
本:がっかりどころか、そこから彼が生涯ずっと言い続ける陰謀説が始まるんだ。
明:陰謀?
本:当時の町長が、彼の中学時代に所属していた柔道部のコーチをしていた人だったんだけど、彼はその人ともともとうまくいってなった。
本人いわく嫌われていたとかで、それで、警察の方に手をまわして、合格確実だった彼を不合格にしたと。
明:そんな、まさか。
本:当時から彼は真剣にそう言ってた。
たしかに公務員関係は、家族なんかのコネ的な採用みたいなものが目立つ職業ではあると思うよ。 でも、さすがに彼の思い込みは・・・
明:なしですか?
本:それをしても町長さんになんのメリットもない気がするんだよね。
ただ、実際、親子で警官とかよくある話なんで、ある種、コネのきく世界というか可能性がゼロと言いきれないけど。
明:翌年また受ければいい気もしますけどね。
本:一度の挑戦で警官はやめて、今度は自動車整備系の専門学校へ進学したんだ。
でも、もともと本人が思い描いていた未来じゃなかったんで、気の乗らないまま、そこを出て全国チェーンのカーショップに就職して、そこの寮に入った。
明:それでもそこで落ち着けばいい気もしますが。
本:今度はそこでいじめに会った。
寮の飲み会でしこたま飲んで寝ていたら、ライターで陰毛焼かれたとか、仕事中に、車の下に潜って、点検していたのに、車を降ろされたとか。
本人としては、すぐに我慢の限界になって、毎晩、何時間もかけて、車で実家に帰ってきて、そこで少し寝て、また出勤する生活になった。
明:キツそうですね。
本:ね。だから、当時、彼と会うとこの状況はなんとかならないのか? ってよく話したよ。 こんな生活じゃ、体がもたない!
明:精神にも悪いですよ。
本:だよね。こうした場合、彼なら腕力はあったわけだから、例えば、腕力でうったえて、いじめてくる連中をブチのめしてしまうのと。泣き寝入りするのとどっちがいいと思う?
明:僕ならすぐにその場から去りますね。
本:彼は消防士になる、とウソをついてそこを辞めた。
明るい未来は見えなかったんで、ヤメるのもアリだと思ったよ、当時は。
明:転職したんですか?
本:今度は、情報技術の専門学校へ入学した。
明:結局、なにがしたかったんです?
本:当時、僕がそう聞くと、だいたい話題は、自分を警察官試験を不採用にした町長の話になった。彼の中にはそのイメージがずっと残っていたんだ。
彼としては、高校もその後も社会的に信用の高い方へ行こうと努力しているのに、妨害されている、報われていないと感じていた。
明:被害者妄想ですか?その人も統合失調症の症状のような感じがありますね。本さんもそう思います?
本:いま、離れた場所から見るとね。当時は、ただ、暗いヤツだなと思ってたね。
友達としては親切でいい人なんだけど、考えが暗いというか。
明:その経歴だと暗くなっても仕方ないですよ。
それで今度は、オカルトに傾倒してね。手製のお守りを作成したりしはじめた。
あと、自分は霊的現象の被害にあっているとうったえ始めたんだ。彼に限らないけど、どうして、霊的現象の被害を語る人って、病的な感じがするんだろう?
明:本さんのところには霊的現象の被害を訴える人が次々と現れるんですか?
本:次々ではないけれど、人生を通じて何人かはきたよ。
話自体も不思議な話が多いんだけど、それを語る本人の雰囲気が普通じゃない。明さんのところへは?
明:きませんよ。僕はお祓いはしてませんから。
精神病の人はそういえば、そうした現実離れしたオカルティックな話をする人も結構いるかもしれませんけど。
ここで一旦僕の考えを話させていただくと、そういう挫折みたいなものは誰にでもあると思うんです。
ただ、一方では僕も含めてそこから精神病に向かってしまう人がいる。
精神病に向かう人と向かわない人の違いは何なのかと考えたりします。僕の答えはこの本のテーマでもある鈍感力だと思うんです。
挫折を気にして深く追求したりすると、その深く追求する姿勢そのものが世間との乖離を生んでいくと思うんです。
すると、滑り台を滑るように簡単に精神病に落ちていく。
精神病は挫折がきっかけになることが多いと聞いたことがあります。挫折したにも関わらずそこからが本当に辛い試練の始まりです。
滑り台を滑ってしまったのでまた上に登ろうとすると、いつまで経ってもずっと滑り続ける闇が続きます。
滑り台を滑ったらいっそのこと地面に飛び降りてしまえば、光が待っているんですが、そのことはまた別の章でお話します。
本:オカルト話としてはね、以前、会社務めをした時に、僕の経歴が、空手の内弟子したり、自分で道場をしたりしているってことで、それを知った人から、霊視やお祓いの相談を受けたことがあるよ。
明:もしかして、それ、引き受けたんですか?
本:うん。さすがに断った。その時も相手がワラもすがらんばかりに真剣な女性だったんで、断ると悪いとは思ったけど、できないものはできないし。
明:引き受けちゃダメですよ。
みなさん、本さんに霊的能力を期待したらダメです(笑)
本気で本さんにダマされると僕や長女さんのように、苦労するハメになります。 きっとこの本に出てくるみなさんも…
本:あのー明さん、僕、ダマしてないですよね。
明:ま、いまのところは、そうですね。
本:この本の彼は、あまり素行のよくない人が多く通う情報専門学校で、年齢も高いしって理由で学級委員的なことをさせられて、それで次に彼が襲われた不幸はバイク事故で、派手に転んでガケに落ちる寸前で膝に穴開けてた。
明:自殺でなく、事故なんですね?
本:前章の彼もこの彼もバイクでギリギリを攻めるのが好きで、どちらも死ぬか生きるかみたいな事故を経験してるね。
おぼろげな記憶だと、前の章のやつは赤信号になるとアクセル吹かして走りだして、今回の人は、峠とか攻めたくなっちゃう人だったんだよね。
明さんじゃないけど、バイクを安全運転しろって注意すると二人とも、死んでも生きてても同じだから、バイクは好きなように乗らせてくれ、みたいなことを言ってたな。
僕は傷だらけになったヘルメットを見て、おいおいと思ってたけどね。
明:本さんはバイク乗らないんですか?
本:乗ってたことはあるけど、この二人みたいにわざわざ限定解除を取って、でかいバイクでムチャをしたりはしないです。
明:よかった。少し、安心しました。
本:で、薄情なような感じだけど、霊的に攻撃されてるみたいなオカルト話が増えたあたりで、僕はいったん彼と距離をとったんだよね。
明:本さん、怪談好きですよね?
本:怪談好きが毎月「ムー」を購読してるわじゃないし、彼みたいにオカルト現象で自分は攻撃を受けていると真剣に思っている人の報告? を毎回、聞いてると、聞いてる方がヘコむよ。
明:ある意味、霊による攻撃の二次被害ですね。
本:うん。それで連絡も取らなくなって数年が経過します。
明:その間に、普通の人に戻って、まともな人生を送っていたりしないんですよね、本さんの周囲の人の場合。
ミステリじゃないですが、事件が起きるから探偵がいるのか、探偵がいるから事件が起きるのか、ってくらい本さん、すごい人と遭遇しますよね。
本:これがすごい美女と次々に遭遇ならいいんだけどね。
明:それは本さんの人生じゃありませんね。はい。
本:数年後、彼は引きこもりになっていた。
明:悪化しちゃいましたか。
ここでまた僕なりの考えを話させていただくと、今回の彼にしても前の章の彼にしても、今は亡くなっているわけなんですよね?
それが、本さんを通して、このように文章として僕の前に現れている。
このことを考えると、やっぱり、この二人は先生なのだと思います。
要は、この二人のことは他人とは思えないので好きなのですが、だからこそ「こっちの道へは来ちゃいけない」と教えてくれているように思えるんです。
僕は死者の声が聞こえるわけではありませんから、声として聞こえるということではありません。 ただ、実際に文章として僕の目の前にこうして現れた。
このことは、僕としては教えてくれていると捉えるわけです。
僕は言ってしまえばこの二人とほぼ同じ道を歩いていました。 だから、いつでも対向車に突っ込んだりオカルトの方へ走ったりする可能性があった。
今だって僕の病気が再発することは考えられるわけで、その際に、この二人からは再発しても決してこっちの道へは来るなよと教えてもらったと感じるのです。
ちょっと先走りすぎましたが、それでどうなったんでしょうか?
本:この再会から、彼の症状の本番と僕は遭遇する。
②精神疾患は24時間、あなたを攻撃する へと続く