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「新極真会空手と統合失調症」NPO法人新極真会静岡湖西豊田道場  & 明読斎 対談 ・第三章 相棒は行方不明③中編

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③勝敗の壁 中編

 

本:彼らとトレーニングして体育協会に加盟した空手部を作ったので、各地の体育協会と友好的な流派の試合にいくつか出場したんだ。

 

そこでまぁ、これは空手あるあるであって、僕は他のスポーツをよく知らないけれども。試合に勝つにはまずは、その試合の主催者が開催する大会(試合)に何度か出場してそこの審判の判定の基準に馴れておくか、ある程度の有名選手として名前を売っておかないと、なかなかそう簡単には勝たせてもらえない

 

判定も流派、大会ごとに明らかにホームタウンデシジョン(ひいき)があったりするし、KOで勝つにしても、ものいいはいくらでもつけられる。KOで技を効かせて相手を倒したのに、後でそれが反則になって逆転判定に負けになるような試合も実際ある

 

ここがフルコンタクト空手が競技人口の割に、サッカーや野球のような本当のメジャースポーツになれない大きな理由の一つだと思うよ。試合の勝敗判定がわかりにくい、不可解だ、ってね。

 

地方レベルの小さな試合から、県や国レベルの大試合まで、どの大会でも誰もが全試合100%納得できるジャッジってことはまずないし、実際、自分の体を痛めて戦った選手は行き場のないフラストレーションを感じる人も多いしね。

 

明:で、本章の彼も空手の試合で勝てなくて、泣いてしまうほど落胆したんですか?

 

本:落胆どころかしばらく口もきかなくなったよね。また、一人で幻聴を聞いてるのが、はたで見ててもわかったよ。

 

明:本さんはでも、そうなるとわかってて試合に出場させたんですよね。

 

本:試合の現場がそういう場なのは知っていたけど、まさか負けて病状が一気にぶりかえすのは予想外だったね。

 

いずれその日はくるんで、仲良しの友達とのトレーニングだけでなく、外の世界とふれて欲しかったんだ。

 

ここで僕が感じたのは、精神疾患の人で勝ち負けにこだわるタイプの人は、負けさせない方がいい、あんまりヘコませるとあっちへ行って帰ってこなくなるってこと。

 

僕自身が、その場で死ぬとか、生涯絶対再起不能な状態になるとかでなければ、ほとんど勝負にこだわらないんで、正直、精神疾患になるほど勝負に固執するのは、すでに僕の理解の域を超えてるね。

 

明:挫折体験が精神疾患の引き金になる場合はあるようですね。空手の試合や小説の賞に応募した時は?

 

本:あれは、どちらも勝つ時は勝つし、負ける時は負けるよね。 負ければ、普通にあーあって思うけど、どうしても勝ちたい勝負なら勝てるまでリトライすればいいんじゃないの、と思うタイプでね。

 

勝っても、そん時、バンザイしてそんだけだけどさ。自分として面倒な時は、相手に失礼だと思うけど、わざと負けたりもするよ

 

この後、仕事あるんでケガしたくないし、今日は帰ります、もういいやって。自主的にばたんと倒れて、なんなら寝ちゃうね。

 

 空手は大山倍達総裁が「試合で強くなりたければ、1年毎月、日本のどこかで試合に出場していれば強くなる」みたいなことを言ってたんで、そうだな、と思ってやろうとしたことがあったよ。

 

あれは実際、毎月大会にでてれば、勝ち方がわかる部分はあるよね。名前も売れるし。極真空手に関して言えば、毎月、どこかで同じ派の試合に出場しているようなやる気のある者には、組織自体が優しくなってくれる部分はあると思うよ。

 

優しいというか、毎日、同じ店にランチにくるお客さん的な、顔なじみさんへの気持ちサービスというかね。

 

小説は、この本に推薦文を書いてくれてる(予定)アニメ会社の社長さんのところの小説募集の時も、ダメならダメだろと思って送ったら、連絡がきて縁ができた。そういうもんでしょ。

 

明:僕は精神疾患の経験者なんで、言わせてもらうと、はい、そういうもんです。とは言えない部分があって、それは僕たちにとっては小さなことが今年(2020年)のウィルス蔓延みたいに大きなことに思えることがあるからです。

 

くどいようですが、普通の人がウィルスが世界に蔓延したってそういうもんでしょと思わないのと同じです。

 

「これはやばい」という対象が違うだけです。もちろん僕たちも今年のウィルス蔓延はやばいとは思いますけどね。

 

それ以上に、普通の人にとっての小さなことに「これはやばい」と思うんです。

 

本:その世間の多くがたいして気にしない事柄で、心のバランスを崩してしまうのは、どうすれば治ると思います?

 

それでバランスを崩しても周囲に対してなんの問題もなく、本人の気分が悪いだけですめばいいけど、そこから、事件を起こしたり、引きこもりになるのを防ぐのは、明さん的にはどうすればいいと思う?

 

明:そのまま、バランスを崩しきればいいと思います。 そのうちまぁいいやって思うと思います。あまり、そこは問題ではありません。

 

「世間の多くがたいして気にしない事柄で、心のバランスを崩してしまうのは、どうすれば治ると思います?」という質問は、今年のウィルス騒動を見て、「これはヤバイ」と思うのはどうすれば治りますか?って質問と同じです。

 

今年のウィルス騒動を見て、「これはヤバイ」と思うのはどうすれば治ると思いますか?

 

本:僕は食品製造の現場にいたことがあって、パン技能士の国家資格を所得しているんで、一般の多くの人とは細菌類の衛生について知識量がちょっと違うかもしれないんだが、今回のウィルス騒動にかんしては、問題はまずマスコミのプロパガンダだと思ったよ。

 

単純に一般国民の不安や各都道府県の首長の迷走は、あそこまでマスコミが大々的に危機感をあおらなければ収まったと思う。

 

こと日本に生活する日本人にとっては、コロナウィルスは、インフルエンザほど危険なウィルスじゃないと思う。感染者の死亡者数や感染者数から見てもね。インフルの時でも、感染者と濃厚接触すればうつるし、人は死ぬよね。

 

なので、コロナで不安にさらされてる人には、僕個人は、日本全国でこれで死んでる人はインフルより全然、少ないですよ。落ち着いて事実を見ましょう。と、伝えるね。

 

明:事実を見ればみんなは落ち着きますかね?

 

本:僕が伝える情報がデータに基づいた正しいものでも、大マスコミがそう報道をしないと、「ケッ、インテリが、黙ってろ!」と言われて無視されるくらいが関の山だと思うよ。

 

明:まず最初に僕は、「治る」という言葉に反応してややこしい聞き方をしてしまいました。すみません。

 

心のバランスを崩すのは僕たちも普通の人も同じだと伝えたかったのです。普通の人も心のバランスを崩すと思います。

 

ですから僕たちも普通の人と同じように心のバランスを崩したときは事実を見れば落ち着くと思います。

 

僕たちから、精神疾患を患った人」や「精神病的気質を持つ人」という括りをはずした方ががどんな疑問にも答えは出やすいと思います。

 

それで二つ目の質問は「バランスを崩しても周囲に対してなんの問題もなく、本人の気分が悪いだけですめばいいけど、そこから、事件を起こしたり、引きこもりになるのを防ぐのは、明さん的にはどうすればいいと思う?」という質問ですが、僕的には気分転換をすればいいと思います。普通の人と同じです。

 

あと、僕は鈍感力があるみたいに言っていますが、鈍感力があるなんて格好つけて言っているだけで、ほんとは鈍感力はありません

 

鈍感力とは象徴みたいなものだと思います。

 

本:僕が、鈍感力と呼んでいるのは、 鈍感力=精神疾患精神疾患の起因となることがらから、自分を逃す力です。

 

多くの精神疾患の人を見ていると、周囲の言葉や身の回りの出来事に過敏になりすぎて、それがきっかけになって発病するケースが多いので、単純に周囲をあまり気にしない方が発病しにくいと思います。

 

僕自身は、周囲を本当に気にしない人間です。正直、もう少し気にしないと、周囲であれこれ言う人がかわいそうかな? と思うほどです。

 

明:前にも書きましたが、鈍感力とは象徴みたいなもので、僕の場合は、自分の望みを知ることで、他のことはまぁいいやと思えるようになった。

 

つまり、本さんの言う鈍感力を身に着けたのだと思います。僕が個人的に重要だと思うのは自分の望みを知ることです。

 

本:鈍感力の実用例として、おまえは体臭が臭いと人から言われたとして、それを気にしすぎて、一日何度も入浴したり、香水をつけたり、しまいには人前にでれなくなってしうとか、僕はそんな時に鈍感力を身につけて、その体臭が臭いと言われたことをそこまで気にするのをやめてしまえばいいと思う。

 

③勝敗の壁 後編 へと続く

「新極真会空手と統合失調症」NPO法人新極真会静岡湖西豊田道場  & 明読斎 対談 ・第三章 相棒は行方不明③前編

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③勝敗の壁 前編

 

本:ここで、彼ら二人と毎日、半日くらいの時間を費やして、人間力復活計画をはじめたんだよね。

 

明:彼らは、自宅で病気療養中として、本さんはなにして生活してたんですか?

 

本:普通に会社員してたよ。僕はデスクワークだけでなくて、工場勤務もしてたことがあって、当時はちょうど工場勤務だったんで、夜勤明けに、朝の六時に彼らと集合して昼間で稽古するとかしてたよね。

 

明:そのローテの中で本読んだり、映画、観たりするんですか?

 

本:そこらへんは、それこそ病気みたいなものだからね。

 

当時がおそらく読書スピードのピークで、映画は観はじめて、これはダメだ、って感じると開始そうそうに自然に寝てた。

 

奥さんから、あんた、映画館へ寝にいってるの? とか言われてた。

 

家のテレビでレンタルを観てても、つまらないと寝落ちしてたよね。

 

明:そこまでして早朝から、なにをするんです。

 

本:彼らは、病気と薬の服用もあって運動不足になっていたりするからさ、もともとはそれぞれ中学、高校の運動部でレギュラーで、それなりの成績を残していたプチアスリートというか、アスリート予備軍なので、準備運動して、2~10キロくらいはランニングして、坂道ダッシュして、極真空手の基本稽古、移動稽古、型といったものを普通の道場稽古の2~5倍くらいの分量をこなして、後、試合用の稽古、ミットやスパーリングも2~3分、10ラウンドくらいして、途中で何度もへばって、腹筋、背筋みたいな補強も入れて、最後はフラフラになるまで毎日、やったよね。

 

明:そうなんですね。

 

本:根が運動好きな人たちだから、やれば真剣になるよね。

 

ウェイトの基本3種目、ベンチプレスは体重プラス100キロ、スクワットは体重プラス200キロ、デットリフトはプラス150キロを目指したよね。

 

ボディビルというより、パワーリフティング的なノリでやってた。ウェイトの後は、みんなでプロティンミルク飲んでたよ。

 

富士登山もした。一合目から頂上まで。寝不足で早朝から登る富士はキツかった。

 

これだけやって抗精神剤を飲めば、よく眠れるよね。

 

この時に僕が思ったのはね、寝不足でふらふらになってそれでも毎日、全力でぶっかると彼らもだんだん普通に戻ってくる、ってこと。

 

明:ムチャしますね。こんな生活して本さん自身のダメージはなかったんですか?

 

本:左肩が亜脱臼して、肉体的ストレスが原因で、メニエル氏症候群になって、突然、平衡感覚を失ったりした。実際は地震は起きてないのに、自分だけ大地震の中にいる揺れを感じるという。

 

明:そうなんですか。

 

本:うん。僕の個人的経験だと精神疾患の人って病気のせいもあって、疑い深かったりするじゃん。

 

でも、この稽古を経て、彼らとは信頼関係ができたと思ってるよ。この稽古を何年か続けたよね。

 

彼らそれぞれの主治医からは、どちらも反対されたけど、本人の意志と、実際、病状が回復していったからね。

 

明:何年もそんなことを。

 

本:うん。120キロの人は80キロくらいまで体重落ちたし、ベンチはみんな体重プラス50キロは普通にあがるようになったよ。

 

明:なにを目指してるんです?

 

本:精神疾患の回復と彼らの社会復帰。体力、運動機能がつくと人間、自信が生まれるし。

 

明:あと、本さん自身の鍛錬ですか?

 

本:前記した以外の僕の負担としては、この時期は、休息が足りなくて、擦り傷、切り傷の修復が追いつかなくて、そうしたケガをすると治らなかった。何日過ぎても、傷がふさがらなくて、カサブタができない。

 

結局、この練習を終了して彼らとまた距離をとるようになったのは、それぞれが一般の会社で普通に働けるまでに回復したからで。

 

明:もしかして、正社員で就職できたんですか?

 

本:うん。一人は、僕の知り合いのところに紹介してお願いして入社。一人は、昔やってた新聞配達の正社員になった。

 

明:ん? これで、めでたしめでたしじゃないんですよね。前章の人は交通事故で…

 

本:一時はこうして幻聴や死にたい病も収まって、普通に働ける社会人に戻っても、なかなかそれがずっとは続かないんだよね。

 

明:わかります。

 

本:家族も本人も安心したような状態で、それはまたやってくる。 精神疾患の再発というか、活発化するきっかけってなんなんだろう?

 

明:人それぞれケースは違うと思いますが、僕の場合だと根を詰めて考えることですかね。ただ、これは卵が先かひよこが先かという感じで、病気だから根を詰めて考えているという側面もあると思います。

 

本:僕は本人でなく、あくまでそれをはたで見ていた人間なんで、はたで見ていたものの意見としては、一見、治ったかな、と思っていると、あれ、いまのでスイッチ入った? と思うような一瞬があるよね。

 

明:それがこの段落のタイトルの「勝敗の壁」ですか。

 

本:うん。今回の章の巨漢の彼は、それが顕著だったね。

 

病気になる前の頃から、例えば、ファミコンゲームで対戦してても、自分が負けそうになるとダウナーになって、しまいには泣いてしまうようなところがあった。

 

高校時代の英語もだし、自動車整備会社のいじめでもそう。そうした自分が苦しい、イヤな局面の話をするだけで、落ち込んで、すねて、泣いてしまう人だったんだ。

 

明:本さんは、横で見てて、それをどう思ってたんですか?

 

本:個性的なやつだな、わかりやすいやつだな、くらいかな。

 

まさか、将来、精神疾患になって周囲を騒がすような事件を起こすとは思ってなかったよ。

 

だから、異常な事件が起きて、犯人が逮捕されても、周囲の人が、まったくそんな人には見えませんでしたとか言っているのは、僕は納得できる。

 

前章の彼もそうだけど、周囲の想像を超える事件を不意に起こしたりする感じだよ。

 

明:なんらかの事件を起こすまでは周囲に気づいてもらえないという側面はあるかもしれません。

 

③勝敗の壁 中編<へと続

 

「新極真会空手と統合失調症」NPO法人新極真会静岡湖西豊田道場  & 明読斎 対談 ・第三章 相棒は行方不明②後編

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精神疾患は24時間、あなたを攻撃する 後編

 

本:彼自身の話だと、声によって世界の人々みんなが隠している真実を知ってしまった彼を、母親やその他の人が葬ろうとしていると、声から教えられたらしい。

 

僕は、幻聴のひどい時期の彼と付き合っていて、電波系ってこういう意味か、と思ったよ。

 

明:どういうことです。

 

本:彼が、筋肉少女帯の歌にあるみたいに、よくわからない怪電波の指令で行動してしまう人の実例に見えたよ。

 

例えば、二人で一緒に道を歩いてると、突然、彼が立ち止まって、、「ヤバイ」とつぶやく。そして、真顔で「ミサイルが発射される」と言いだすんだ。

 

明:統合失調症にありそうな話ですね。

 

本:横にいた僕には意味不だったよ。

 

声がどこかでミサイルが発射されたことを教えてくれたんだそうだ。

 

北朝鮮のミサイル発射を霊感で感知したのかとも思ったけれども、その時、世界のどこかでミサイルが発射されたってニュースはなかった。

 

明:声に選ばれた人間である彼だけに、その極秘情報を教えてくれるんですね。精神病的な症状ですね。

 

彼の病名はなんだったんですか?

 

本:それがね。彼は都合、何回か、入退院を繰り返してるんだが、精神科医は、彼に病名を教えてくれなかったと言うんだ。

 

担当医に聞いても、「それは教えられないなぁ」と言われるとか。

 

明:本さんは聞きに行かなかったんですか?

 

本:行ったよ。医師に病名は教えてもらえなかった。

 

それどころか、その医師からは、あの空手の先生と縁を切るように言われたと彼経由で聞いた。

 

明:嫌われてますね。

 

本:うん。 これまで精神科医にも数件ついて行ったけど、そこはね、彼以外の患者さんたちからも評判が悪くて、あくまで自分のペースで患者を薬物中心で治療するお医者さんだったね。

 

すごい量の薬を出すので、服用してると、いつでも半覚醒状態で、彼はそれを何年も続けた結果、5年以上の引きこもり、70キロだった体重が120キロオーバーになったんだ。

 

医師の指示通りに薬を飲んでいると、脳の働きが極端に抑えられて、うまく話せない、ほぼ、なにもできないような状態になる。

 

 

明:本さんは、このお医者さんのやり方に反対ですか?

 

本:彼以外にもここへ通院していた人がウチにきたんだけど、その人もあまりうまくいってなかったし、僕は薬を強めに与えて、後は放置しておくやり方を何年も続けるのは、どうかと思うね。

 

そのやり方が人手がかからなくて、薬で動けないから事件も起こさなくて、一番、安全だと思ってるのかもしれないけれど、これってかって精神病患者にロボトミー手術前頭葉の一部を切除して意志を弱くする)をして牢屋に入れていた19世紀の治療法の現代版みたいなものじゃないの。

 

薬物を補助的に使って、対話で患者の心を治癒してゆくのが、現代精神医学の治療法だよね。

 

精神疾患の患者さんって勉強家も多いから、本やネットで調べて、自分がどんな治療を施されているのかを知って、結果、その医師に不信感を抱いて、ますなす治療の効果があがらなくなると思う。

 

明:理想は本さんの言う通りにしても、現実はそうでない医師もいますね。

 

薬に頼る現場はやっぱりあると思う。

 

本:薬を飲みながらも、彼は声に従って、失踪して山に籠って、オノだかナタで自分の腕を切り落とそうとしたり、たまに正気を取り戻し、このままではダメだと、首を吊ったり、薬を多量に飲んで、自殺しようとしたりしてたよね。

 

明:本さんは、彼になにをしたんです。

 

本:幻聴が指示した失踪がきっかけで、日々、多量の薬を飲んで、家に引きこもっていた彼に頼まれてね。

 

「本。お金を払うから会いに来て、オレと空手をやってくれ」って、で、お金はいらないけど、友達のお願いなので、空いてる時間はとにかく会いに行って、一緒に運動したり、話を聞いたりした。

 

明:本さん流、治療法ですね。

 

本:うん。精神疾患の人の話は、同じことの繰り返しだったりして、聞いてて正直、うんざりすることもあるんだけど、ともかく、相手が話し疲れるくらいまで、会うたびに話を聞き続けてやるんだ。

 

そうすることで、信頼関係ができてくると僕は考えるね。

 

明:それはいい考えですね。

 

本:そこは、患者に愛のある人がやることだと思うよ。

 

僕のは愛だけでなく、これが空手の修行だと思っていたから。

 

明:精神疾患者のカウンセラーが空手の稽古ですか?

 

本:素手素足で武器を使わずにミラクルを起こすのが極真空手なのでね。

 

これもまた自分の人間力を高める修行だよね。 人のためにもなるわけだし。

 

明:で、前の章の彼とも一緒に三人で実際に空手の稽古をしたりしたんですか?

 

本:うん。それがNPO法人新極真会静岡湖西豊田道場の始まりだよ。

 

明:死にたい人と空手をするって、どんな気分ですか?

 

本:それはそれとして誰とやっても空手は空手だから、互いにそれぞれ自分の心を見つめながら、稽古してたよね。

 

明:素晴らしいですね。

 

③勝敗の壁 へと続く

「新極真会空手と統合失調症」NPO法人新極真会静岡湖西豊田道場  & 明読斎 対談 ・第三章 相棒は行方不明②中編

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精神疾患は24時間、あなたを攻撃する 中編

 

明:また事件があったんですか?

 

本:きわめて彼、個人レベルの事件なんだけど、情報技術の会社に就職した彼は、だんだん、声が聞こえるようになったんだって。

 

明:幻聴ですか?

 

本:うん。本人は認めないど、間違いなく幻聴だと思う。

 

明:逆に本さんは、なぜ、そう言い切れるんですか?

 

本:再会後、引きこもりをしていた彼と日々、長い時間を一緒に過ごしたんだが、 ある時、彼が僕の目の前でぼぅーと宙を見ていて、急に。「はいっ!」って大きな声で返事をしたんだ。

 

 僕はなにがなんだか意味がわからなかったんで、「どうしたの?」と聞いたら、彼が隣にいる僕を驚いた顔で見て、「え!本。いまの話、聞こえなかったの?」目をまるくしてた。

 

彼は、その彼にしか聞こえない声に、「はい!」と答えていたんだ。 もちろん、その声は僕には、まるでなにも聞こえなかった。

 

彼は、「本当に、聞こえなかったの?」 と、何度も僕に尋ねてきた。 僕の方は、これが幻聴ってやつか!ってすごく驚いたよ。

 

あれは、本当に、患者本人にしか聞こえないんだよね。

 

明:周囲の人に自分の幻聴が聞こえてない、幻覚が見えていないのが、信じられないという症状はたしかにあると思います。

 

本:この彼はそれがひどくて、しょっちゅう幻聴を聞いていた。

 

明:本さんは彼が幻聴を聞いてるのが、わかるんですか?

 

本:だんだんと、なんとなくね。幻聴の内容はわからないんだけど、彼の表情やその後の言動に、それが現れるんだよね。

 

この彼は最後には、失踪して行方不明になってしまうんだけど、それまでの彼の何度かの危行から考えて、失踪の原因は幻聴による命令、指示の可能性も強いと思うな。

 

情報会社を辞める直前ぐらいには、彼はその幻聴に従って行動するようになっていた。

 

男女複数の人物の声が、彼に意識のある間中、いろんなことを話しかけてくるんだ。

 

明:それは実在の特定の誰かの声ではないんですね。

 

本:うん。 彼が言うには、声の主が何者かはわからないらしい。

 

彼が、幻聴に。「あなたは誰ですか?」と聞いても、「そんなことはお前には関係ない」と言って、教えてくれなかったらしい。

 

彼自身は、こうした幻聴も霊の仕業なのか精神疾患なのか、判断がつきかねているかんじだった。

 

あのさ、経験者である明さんに質問がなんだけど、霊の仕業なのか、精神疾患なのか、わからないものなの?

 

明:僕の場合は霊体験も、幻聴もありません。あったのは妄想です。

 

本:さらに質問なんだけど、明さんが悩まされた妄想は、なにかが見えたり、聞こえたりするわけでなく、あくまで、現実でない考え(ヴィジョン)に明さんが囚われてしまうというものなの?

 

それは周囲の人は、明さんの言動を通してしか知ることができない?

 

そして、明さん自身には、それが妄想であって、霊や宇宙意志からの通信ではないとわかるの?

 

明:その通りです。 現実でない考えに囚われてしまいます。

 

周囲の人は僕の言動を通してしか知ることはできません。 妄想のときは妄想の中に入り込みます。

 

なので妄想が現実だと思っています。 霊や宇宙意志が登場することはありません。

 

本:そうすると、リアルな夢のようなもので、現実にはなかった出来事をあたかも本当に体験したように思い込んでしまうわけ?

 

明:だいたいその通りです。現実にはない出来事も(僕の場合はいちばんひどいときは、ある組織に命を狙われるという妄想)現実にはないのですが、僕にとってはそれが現実に思えるのです。

 

だから実際に怖いし、逃げないと死ぬと思うんです。

 

本:それの症状がひどくなると、殺人や爆破事件を起こしてしまう人もいるわけ?

 

明さん自身から見て、今回の章の彼と明さんの症状の違いはなんでしょう?

 

明:最初の問いの答えは、そうだと思います。 ただ、殺人や爆破事件に至るにはそうとうな心理的距離があると思います。

 

怖い思いをしている最中に殺人や爆破はあまり思いつきませんよね? 逃げようと思うのが先です。

 

そうとうな心理的距離を超える何かがあって初めて殺人や爆破に至ると思います。思いつめて殺人や爆破に至ってしまうのは普通の人だって同じですよね?

 

本:障害者のグループホームを襲撃した元職員や京アニ放火の犯人は、それぞれどれに至る内的動機の妄想を作り上げていたと。

 

明:今回の章の彼と僕の症状の違いは幻聴か、妄想かという違いぐらいであまり無いと思いますよ。

 

本:今回の彼はまず、声の指示に従って、朝、会社に出勤するフリをして車で家をでて、静岡市へ向かった。

 

それが失踪事件になって彼の異常さが周囲に伝わった。

 

明:静岡へ行けと声に指示されたんですか?

 

本:だ、そうです。 朝、家を出る時に、見送ってくれるお母さんが、彼を殺そうと包丁を隠し持っているから注意しろと声に指示されていたそうだ。

 

明:危険な幻聴ですね。

 

精神疾患は24時間、あなたを攻撃する 後編へと続く

 

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