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「友人Sの家で"出た"話」 竹書房ホラー・マンスリーコンテスト 落選作品

みなさんこんばんは。

暑い夏の夜少しひやっとする話はいかがですか?

先日応募した、竹書房ホラー・マンスリーコンテストに

落選いたしましたので、こちらで掲載いたします。

「夏に纏わる怖い話」がテーマの私が実際に友人から聞いた話です・・。

 

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「友人Sの家で"出た"話」

これは私が大学生の頃の話です。

私はよく友人Sの家に泊まっていました。

 

Sは一人暮らしで、Sの家では夜まで遊んだり、勉強をしたりします。

そして、普段なら夜は何も無く寝ます。

 

しかし、日差しの強い夏のある日のことでした。

 

Sは私にこう告げました。

「昨日の夜、出たんだよ」

 

私は一瞬何のことか分かりませんでした。


よくよく聞くと、

Sが前の晩、ベッドで寝ていたら、

足元から白い手がニョキッと出てきて、

Sの足を引っ張ったそうです。

 

Sはベッドの下に落ちたら帰って来れないと思い、

必死で抵抗したそうです。

 

すると、手はなおさら力を入れてSの足を引っ張ったそうです。

Sが言うには、手がSの足を引っ張る度に、ベッドがギシッギシッと軋んだそうです。

 

そして、Sの体が徐々にベッドの縁まで引っ張られて、

ベッドから落ちそうになったとき、

冷たい空気が体中に纏わり付いたそうです。

 

もうダメだ。

 

Sはそう思い、心の中で念仏を唱えたそうです。

すると、手は急に力が抜けて、床に引っ込んだそうです。

 

そう告げるSの顔は真っ青でした。

 

私はその少し前までSの家に泊まっていたので、

あのベッドで……と思い、Sの告げる様子が生々しく想像できました。

それは私にとってもとてつもない恐怖でした。

 

Sは続けて私にこう言いました。

「だから、しばらくうちには来ないほうがいいよ」

 

私は怖かったので、Sに言われるまでもなくそうするつもりでした。

私はそれにしてもSは平気なのだろうかとSの身を案じました。

 

そして、私がSの家に泊まりに行かなくなったある日、

 

私はとうとう見てしまいました。

Sがそれまでいなかった彼女と二人で歩いているのを。

 

私は最初はSの家には「出る」と聞いていたので、

彼女が気の毒に思えました。

 

しかし、よくよく考えてみると、

Sの身にそんなにすぐに彼女が出来るとは思えませんでした。

 

Sが「出た」と告げた日には、

Sの身にすでに彼女が出来ていたのかもしれません。

 

しかし、真相は未だに闇の中です。

 

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